インタビュー記事(2) 日下部晴香さん

last-update:2017/06/05

  日下部晴香さん

理学系研究科天文学教室 嶋作研究室 博士1年(2017年3月 取材当時)

研究分野について教えてください。

 宇宙の主要な構成要素である銀河が、約140億年の歴史の中でどう進化してきたかを調べています。特に遠くの銀河を観測的に研究していて、ハワイにあるすばる望遠鏡やKeck望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡などを使っています。

海外にはたくさん行かれるんですか?

 海外に行くのは年に 1、2 回です。年に一度は国際学会に行くようにしています。学会のついでに海外の天文台や大学にお邪魔して、談話会の時間をもらったり議論をしたりすることもできます。そういう時は、最高に楽しいですよ。観測も年に1回程度です、最近は観測データを日本のグループ全体で共有する大きなプロジェクトが主要になりつつあり、三鷹の国立天文台でハワイの望遠鏡を動かすリモート観測も増えていて、昔よりは観測のために海外に行く機会は減っていると思います。頻繁に観測でハワイに行く人は移動と時差ボケで大変そうです(笑)。

今の研究分野には昔から興味がありましたか?

 天文学専攻に進んだ時は銀河とAGN(活動銀河核)の共進化に興味があったのですが、勉強していくうちに銀河自体の進化に興味をもつようになりました。
 AGNに興味をもったきっかけは駒場の授業でした。オムニバス形式でそれぞれの先生が天文学の色んな分野の話をしてくれる授業で、講義を聞いていく中で面白そうだなー、と。天文学科には昔から入りたかったですね。天文学って、科学の中でも一番見た目が綺麗だし、時間と空間のスケールが大きいと思うんです。そういうところに純粋に惹かれていました。高校生の時は部活ばかりやっていて、何か天文学に関わる活動をしていたわけではないんですけどね。

研究生活の一日はどういったスケジュールですか。

 日によるんですよね。ゼミとミーティングが両方とも入っている日もあれば、研究だけで大きな予定のない日もあります。平均すると、だいたい、朝8時に起きています。それから12時くらいまで、研究をしつつ家事や身支度をしていますね。
 研究室行事の集中している日では、登校後に3 時間くらい解析したら、1.5時間程ゼミに参加します。ゼミでは、その週に出た論文を紹介しあったり、特定の分野についてまとめられたレビュー論文や教科書を読み進めたりします。その後のミーティングでは、研究の進捗報告と議論をして、19 時-20 時ころまで再び解析をしてから帰宅することが多いです。
 行事の無い日は、研究を進めるのに集中します。おやつ休憩くらいはしますよ。
 帰宅してからも、寝るまで解析を続けたりしています。ドラマとかを見る日もありますが(笑)。先ほども言ったように、日によって、時期によってかなり違うんですけどね。それから、人によっても違うと思います。

天文学の魅力は何ですか。

 美しい銀河の成り立ちの背景に物理学があるところが魅惑的です。

研究をしていて楽しいこと、辛いことは何ですか。

 研究をしていて楽しいことは二つあります。まずは、「仮説がその通りになった時」、「よっしゃ!」って思います(笑)。もう一つは、「全く予想しなかった結果が出た時」です。どきっとするけれど、それが研究の面白さだと思います。
 あとは、国際学会などで海外の方と議論したり、交流を深めているときはわくわくが止まらない。特にヨーロッパやアメリカには女性研究者が沢山いるので、同性の友人が増えていくのはとても嬉しいです。
 つらいことは、必ずしも努力に見合う良い結果が得られるとは限らないことです。天気が悪いとか、装置トラブルなど、自分ではどうにもならないところで予定のサイエンスができなくなってしまう時だってあります。でも、そういう大変時があるからこそ、それを工夫で乗り越えた時の達成感が大きいので、山あり谷あり、ですね。
 研究以外では、修士を卒業するときに就職して天文学から離れていってしまう同級生や後輩がいるのが寂しいです・・・。仕方のないことですけど。一方で、学内の理学系イベントとか、女性交流イベント、学外行事には積極的に参加しているので、学部生の頃よりも多様な友人知人に恵まれて人間関係は広がっています。最近は学生同士で結婚した友達もできて、研究と家庭の両立も一緒に頑張れる人がいるから心強いですよ。

今後、どういった道へ進むつもりか教えてください。

 研究を続けたいので、ポスドク(研究員)の公募に応募するつもりです。どこかの段階で海外の天文台で働いてみたいとは思っているのですが、結婚していて、子供が欲しいので、いつが良いのか未だわかりません。今だと思った時にチャンスを逃さないように常にアンテナを張り巡らせています。
 研究はずっと続けていきたいですね。ずっと海外にいたいというわけでもなく、日本で終身雇用で雇って頂いて研究ができる日が来たら最高だなと・・・。今の日本の仕組みだと、研究者にとって先々のことは中々見通しがたたないという問題はあるんですが、先輩方もわからない中でも一生懸命頑張っているので、私もできる限りのことをして夢を叶えたいです。天文学は楽しいよ☆


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