なぜ宇宙再電離は非一様に進んだのか?―石本梨花子(博士課程学生)、柏川伸成(教授)


130億年程度昔の宇宙では、それまで中性だった宇宙空間のガスが初代天体によって電離されるという宇宙空間の大きな変化があったとされています。これは宇宙再電離と呼ばれる初期宇宙の一大イベントですが、その詳細な過程や原因は解明されていませんでした。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の石本梨花子大学院生、柏川伸成教授らは、宇宙再電離の進行具合が場所によってまちまちであることの原因を探るため、すばる望遠鏡を用いて再電離の進行の遅い領域・早い領域の観測を行いました。その結果、進行の早い領域では銀河密度が高く、逆に進行の遅い領域では銀河密度が低いことが世界で初めてわかりました。この結果をシミュレーションと比較し、周囲の紫外線の強さのゆらぎが再電離の進行の非一様性の原因であることを結論づけました。本研究では、これまで観測されなかった再電離の進行が早い領域についても銀河分布を調べ、宇宙再電離の過程の解明にせまるものとなりました。

図:すばる望遠鏡ハイパーシュプリームカムで観測した領域における銀河密度分布の例。色が明るい場所ほど密度の大きいことを表します。視野中心の黄色い四角形は再電離の進行が速い領域を通過するクェーサー視線、白抜きは明るい星の周囲など、データのないところを示します。