生命が存在しない状態から、どのように生命が発生したのでしょうか。自己複製できる高度な遺伝情報を持った生命体が、非生物的でランダムな反応から偶然生じる確率はあまりにも小さいと考えられてきました。しかし最新の宇宙論によれば、宇宙は我々が観測可能な距離(138億光年)のはるかむこうにまで拡がっています。その広大なインフレーション宇宙(注1)のどこかで生命が発生すれば、地球に今、我々が存在することは説明できます。東京大学大学院理学系研究科の戸谷友則教授は、生命誕生に必要な最小限の複雑さと情報を持った高分子が、実際にインフレーション宇宙のどこかで生じうることを明らかにしました。実験などで見られる単純な高分子生成反応だけで生命が誕生しうるほど、宇宙は広大なのです。