寒い冬、雲の中で雪が作られるように、銀河の特定の領域では氷が作られます。新潟大学自然科学系(理学部・大学院自然科学研究科)の下西隆准教授、東京大学大学院理学系研究科の尾中敬名誉教授および左近樹准教授らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、赤外線衛星「あかり」により発見され、水や有機分子などを含む氷が豊富に付随していることが知られているものの、その性質がよく分かっていなかった謎の2つの氷天体の分子ガスの観測を行いました。観測の結果、2つの天体に付随する分子ガスの距離や運動、大きさ、化学組成などが明らかになりましたが、その性質はこれまでに氷の存在が知られているいかなる種類の天体の特徴とも一致しませんでした。今回の研究は、2つの天体がこれまでに知られていない新たなタイプの氷・有機分子生成の場である可能性を示唆しています。本研究成果は、2025年2月25日、天文学論文誌「The Astrophysical Journal」に掲載されました。
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図:(左)アルマ望遠鏡が捉えた謎の氷天体からの分子輝線放射。背景の画像は、波長1.2 µmの光を青で、4.5 µmの光を赤で色付けした赤外線カラー合成図 [2MASSおよびWISEによる赤外線データに基づく]。(右上)あかり衛星により観測された左図上側の天体の赤外線スペクトル。氷や塵による吸収バンドが見られます。(右下)2つの氷天体の銀河面上での位置(ESA/Gaia/DPACの画像を改変)。クレジット:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), Shimonishi et al. , ESA/Gaia/DPAC