天の川銀河は、太陽を含む数千億個の星が集まる渦巻銀河である。しかし、星の分布を外から見ることのできる他の銀河と違い、我々自身が内部にいる天の川銀河の形を調べることは容易ではない。また、天の川の円盤中に存在する大量の塵によって星からの光がかすかになってしまうことも大きな障壁であった。東京大学理学系研究科の松永助教をはじめとする国際共同研究チームは、塵に隠されているために星の分布がよくわかっていなかった銀河中心の周辺とその向こう側に、29個のセファイド変光星を発見した。セファイド変光星は、個々の星までの距離を得られる「宇宙の灯台」とも呼べる天体であり、高等学校の地学の教科書でもおなじみである。今回の研究では、塵によって星の光が吸収散乱されてしまう効果も新たな視点で解析を行い、天の川銀河の中心付近の星の分布を描き出すことに成功した。それによって、銀河の中心から約8千光年の範囲が、セファイド変光星によって代表される若い星(3億年以内)がほとんど存在しない「すき間」であることを世界で初めて明らかにした。銀河の形を探る上で、セファイド変光星が「宇宙の灯台」として重要な役割を果たすこと、その距離の測定には塵の効果を正しく考慮に入れる必要があることを示した点で、今後の天の川銀河の研究に大きな影響を与える成果である。
詳細については、理学系研究科のページをご覧下さい。