新星爆発で生まれる有機物の塵の合成に成功―遠藤いずみ(大学院生)、左近 樹(助教)


宇宙にどのような有機物がどこでどのように生まれ、我々の身近な有機物と関連するかを知ることは天文学そしてアストロバイオロジーにおける重要な研究課題である。赤外線天文観測技術(注4)の進歩によって、星間物質中に多環式芳香族炭化水素(注5)のような有機物の分子や塵が普遍的に存在することが示唆されるようになったが、星間有機物の物質同定や形成過程の理解は依然として不十分であった。

 

東京大学大学院理学系研究科博士課程2年の遠藤いずみ、東京大学大学院理学系研究科の左近樹 助教らを中心とする、東京大学・明星大学・北海道大学・電気通信大学・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・横浜国立大学・海洋研究開発機構(JAMSTEC)・兵庫県立大学・日本大学・The University of British Columbiaなどの研究グループは、新星が有機物の塵を生み出す過程を定性的に模擬して有機物の塵の室内合成実験を行い、新星に観測される赤外線スペクトルの特徴が、アミンを含有する有機物の塵である 急冷窒素含有炭素質物質 (Quenched Nitrogen-included Carbonaceous Composite: QNCC) によって再現されることを示した。

 

この研究結果は、宇宙における星間有機物の一生を理解する上で、その誕生の過程に焦点を当てたものである。宇宙の有機物は、我々の起源を知る上で鍵となる物質である。地球上に起源を持つのか、それとも宇宙から飛来したものに起源を持つのかは、現代のアストロバイオロジー研究における重要な問いである。本研究は、新星が生み出す有機物の塵の姿を特定することを通じて、後者の起源の可能性を探るための重要な第一歩を与えた。

 

詳しくは、理学系研究科のプレスリリースをご覧ください。