大質量星からの光が惑星系を形作る―尾中敬(名誉教授)


我々の太陽系のような惑星系はどのように形成されるのでしょうか?フランス国立科学センター(CNRS)の Olivier Bernéらが中心となった日本を含む欧米などの各国の研究者からなる国際研究チームは、James Webb Space Telescope (JWST)とAtacama Large Submillimeter/Millimeter Array (ALMA) を用いて、オリオン星雲にあるd203-506と呼ばれる原始惑星系円盤を観測し、誕生したばかりの年齢百万年以下の若い惑星系の形成に、質量の大きな星が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。

太陽の10倍以上の質量を持つこれらの星は、太陽より10万倍も明るいという特徴を持っています。このため、近くにある生まれたばかりの惑星系は非常に強い紫外線にさらされることになります。惑星系の中心にある星の質量により、この強い紫外線は惑星の形成を助けることもあれば、惑星系にある物質を散逸させることにより、惑星の形成を阻害する場合もあります。JWSTは塵に囲まれたオリオン星雲の中にある惑星系のガスの量と温度を正確に測定する一方、ALMAの観測から中心星の質量を見積り、今回初めてこの惑星系から散逸していくガスの割合を正確に求めることに成功しました。オリオン星雲ではこの強い紫外線のため、惑星系円盤d203-506では木星のような惑星の形成は難しいであろうと考えられます。

本研究成果は、これまでにない精度の観測から、大きな質量の星が惑星系形成で果たす決定的な役割を明らかにし、どのようにこれらの惑星系が形成されるかについての新しい描像を提供し、2024年3月1日発行の Science 誌に発表されました。本研究チームには、東京大学名誉教授(天文)の尾中敬が加わっています。

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図:オリオン星雲のハッブル画像と、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で撮影された原始惑星系円盤d203-506の拡大画像。
(c) NASA/STScI/Rice Univ./C.O’Dell et al / およびO. Berné, I. Schrotter