すすに覆われた変光星を銀河系中心部に世界で初めて発見―松永典之(助教)


我々の太陽系が属している銀河系(天の川銀河)の中心部には、バルジと呼ばれる数百億個の星が密集した領域があります。10年ほど前までは、バルジの中には約百億年前に作られた古い星ばかりが存在していると考えられていました。しかし、数はそれほど多くないながら数億年から数十億年の比較的若い星も存在し、バルジにある星の集団はそれほど単純でないことが、最近の研究で指摘されていました。東京大学大学院理学系研究科の松永典之助教を中心とする国際共同研究チームは、バルジの中にある星の中でも特にミラ型変光星というタイプの天体に注目し、その中に酸素よりも炭素を多く持っている星が存在することを世界で初めて発見しました。

バルジにあるミラ型変光星のほとんどは酸素を主成分とする固体微粒子を星間空間に放出していますが、今回発見された天体は炭素を主成分とする固体微粒子を放出しています。少数ながら、異なる化学組成を持つ固体微粒子を放出するミラ型変光星があることは、バルジを構成する星の集団の複雑さを示す新しい証拠です。新たに見つかった炭素すすを放出するミラ型変光星の年齢などははっきりとわかっていませんが、バルジがどのように星を作ってきたのかという銀河系の歴史を探るための重要なヒントを与えてくれるものと期待されます。

詳しくは、理学系研究科のページをご覧下さい。