松永典之らの研究グループは、太陽に似た星(太陽類似星)の観測から、銀河の中でリンの含有量の増え方が銀河内の時期と場所によって異なることを明らかにしました。生命に必須の元素であるリンは、可視光観測では含有量の測定が困難でしたが、本研究では、近赤外線に現れる5本のリン吸収線を用いることで、高精度のリン含有量測定を実現しました。その結果、太陽類似星の年齢とリン含有量との間に明瞭な相関があることを世界で初めて示しました。太陽類似星の年齢は、単に「いつ生まれたか」を示すだけでなく、「銀河のどこで生まれたか」を反映する手がかりだと考えられています。最近の研究では、太陽が現在の位置よりも銀河の内側寄りで生まれ、長い時間をかけて今の場所まで移動してきたシナリオが示されています。今回の観測結果から、銀河の内側で早い時期に生まれた太陽は、現在の太陽近傍で生まれる太陽類似星と比べて、リンを多く含む環境で誕生したと考えられます。これは、太陽系が銀河の内側で生まれた結果として、生命をはぐくむための材料となるリン元素のボーナスを受け取っていたことを示す成果です。
