インタビュー記事(1) 尾中敬教授

last-update:2017/06/05

  尾中敬 教授

理学系研究科天文学教室 教授(2017年3月 取材当時)

研究分野について教えてください。

 日本初の宇宙赤外線望遠鏡IRTS、その後2006年に打ちあがった望遠鏡あかりなどを用いた赤外線観測をしています。装置自身の立ち上げにも携わり、搭載する観測装置の開発を宇宙科学研究所と共同で行いました。観測対象は「星間物質」と呼ばれる星と星の間にある物質です。星間物質の観測から星が形成されていく領域について調べている人もいるけれど、私はそういったプロセスよりは物質そのものの物理状態を見ています。実質的には、星がどう生成されるかとか、銀河進化などにもつながる分野ですね。

天文学科の魅力は何ですか。

 学生にとっては、学生の数が少ないことが魅力なんじゃないでしょうか。人数が少ない分、物理学科や地球惑星科学科などの授業があって、他学科との交流もあるでしょうし。時間に余裕がある分、興味のある勉強ができるというのも魅力ですね。東大が望遠鏡をいくつか持っているので、観測実習などが体験できるのもいいところだと思います。

では、天文学の魅力は何ですか。

 手に取って見られないものを調べていること、ですかね。手に取って見られる方が面白い、という人もいますが(笑)。リモートセンシングで調べているので、「勝手に想像できる」という面白さがあります。まだまだ観測技術が追いついていないので、分からないことがいっぱいありますよね。そういう意味で、宇宙というのは比較的、「人にわかりやすくおもしろい」対象だと思います。
 あとは、Astrobiologyのように、他の分野と重なる領域で、学際的な広がりがあるのも面白さだと思います。

ご自身について、学生時代に描いていた将来像と現在は繋がっていますか。

 学生時代は、大学に残って研究できればいい、とは思っていましたが。思った通りになっているかと言われれば、微妙ですね。研究を続ける中で思いがけない方向に進んだというのもあると思います。 
 大学に入った時はそもそも、数学科や物理学科とも悩んでいました。そのころ天文学科は各学年6人しかおらず、優しそうだった(笑)。カリキュラムも少なくて、自由が利きそうだった、というのは今と変わらないところかもしれないですね。
 私の頃は大学院に入ってから指導教員を決めたんだけど、研究分野はそのときに決まりました。そのころはダスト関係の実験をやっていました。流れで始めた、というのが正直なところかもしれません(笑)。やり始めて初めて面白さが分かるってこと、ありますよね。当時の天文学の流行りは現在のような宇宙論とか遠方銀河とかではなく、恒星を調べている人が多かったです。Late-type starの研究室が人気で、あとは星の理論とか、太陽とか。星の進化が一番盛り上がっている時代でした。あとは、電波望遠鏡を作り出した頃でしたね。ダストの電波観測をしている研究はあったけれど、その頃、星間物質の赤外観測をやっているところはまだまだ少なかったです。やりたいなあと思っていたけどやれるチャンスがなかったので・・・、大学に残って研究を続けていく中で、徐々に大きいプロジェクトに関わるようになってきた、という感じでしょうか。

天文学科の生徒に何を期待しますか。

 難しいですね・・・(笑)。観測に興味のある人が多いですが、もっと、ハードウェアに興味のある人にも来てほしいな、というのはありますね・・・。それから、残念ながら日本の天文学コミュニティは小さいので難しいけれど、できれば研究職に残ってほしいという思いがあります。天文学を学べる大学は少ないので。
 あとは、ぜひ積極的に海外へいってほしいです。海外のほうが奨学金制度などは充実しているので・・・。留学にも、ぜひ行ってみてほしいです。

天文学科に入るまでに何を学んでおけばいいですか。

 何をやりたいかによるけれど、やっぱり物理は大事ですね。天文学科に入ってからも物理の授業があるので、力学や電磁気学、量子力学など、ついていけるように準備しておくといいと思いますよ。まあ、天文学科に入ってからも演習の授業があるので、そこでしっかり身に付ければ、心配は要りませんが。


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